EARTH

 

あなたは、巨大地震が来ると思っていますか?

来ると思う人は、備えができていますか?

来ないと思う人は、その根拠がありますか?

地球の内部って、思ったより複雑なんだけど、

思ったよりも規則性があると私は考えているんですよ。



著者プロフィール
後藤忠徳(ごとう ただのり)

大阪生まれ、京都育ち。奈良学園を卒業後、神戸大学理学部地球惑星科学科入学。学生時代に個性的な先生・先輩たちの毒気に当てられて(?)研究に目覚める。同大学院修士課程修了後、京都大学大学院博士後期課程単位取得退学。博士(理学)。横須賀の海洋科学技術センター(JAMSTEC)の研究員を経て、2008年から京都大学大学院工学研究科准教授。光の届かない地下を電磁気を使って照らしだし、海底下の巨大地震発生域のイメージ化、石油・天然ガスなどの海底資源の新しい探査法の確立をめざして奮闘中。著書に『海の授業』(幻冬舎)、『地底の科学』(ベレ出版)がある。個人ブログ「海の研究者」は、地球やエネルギーにまつわる話題を扱い評判に。趣味は、バイクとお酒(!)と美術鑑賞。

 

知識ゼロから学ぶ

地底のふしぎ

 

第14話

火山噴火予知は可能か?(2)

文と絵 後藤忠徳

さて、火山とは一体何でしょうか? 日本にはなぜ火山が多いのでしょうか? まずは誰もが知っていそうで、実はよく知らない火山の仕組みから考えてみましょう。

図1. 河口湖(山梨県)の向こう側に見える富士山。2008年11月撮影。富士山はもちろん活火山です。

◎火山の地下は100km!?

「火山」とは、「マグマ」と呼ばれるものが地表や水の中で噴出してできた地形のことです。多くは盛り上がって山になりますが、マグマが噴出した後で地面が大きく凹む場合もあります。これは「カルデラ」と呼ばれています。
では、マグマとはなんでしょうか? 「岩石が熱くなってドロドロに溶けたもの」と思っている方が多いと思います……正解です!
岩石が溶けて液体状になったものや、そこから出てきた気体、さらに岩石そのものが入り混じって、ドロドロと流れる性質を持つものを「マグマ」と呼んでいます。
マグマと似たものとして「溶岩」という言葉もよく耳にします。マグマと溶岩はよく混同されますが、地表に流れ出たマグマ(あるいは固まって岩石になったもの)を「溶岩」と呼んでいます。
マグマといえばもう一つ、「地下はマグマだらけ、地下を掘り進めばマグマに突き当たる」というイメージをお持ちの方も多いでしょう。しかしこれはちょっと違います。たしかに地球の地下深くは、地上よりも高温です。本連載の第1話でご紹介したように、地球の表層は地殻と呼ばれる岩盤で覆われており、その下にはマントルと呼ばれる層が広がっています(図2)。
マントルの上部は摂氏数百度~1000度、マントルの下部は3000度~4000度に達していると考えられています。このような高温状態ですから、「マントルの岩石は全部ドロドロに溶けてマグマになっている」と思いがちですが、実は違います。
地下深くは温度とともに圧力も高くなります。たとえばマントルの上部では大気圧の数万倍、マントルの下部では大気圧の100万倍以上の圧力が、岩石にのしかかっています。温度が高くなると岩石は溶けやすくなりますが、圧力が高くなると溶けにくくなります。地球の内側では温度よりも圧力の効果が勝ってしまうため、マントルの大部分は溶けていません。

図2. 地球内部構造の模式図。マントルはさらに4層に、核は2層に区分される。本連載第1話より。

「あれ? でもマントル対流っていう言葉を聞いたことがあるよ?」
多くの人が"マントルは全部溶けている"と勘違いしてしまっている原因は、この「マントル対流」という言葉からきているのかもしれません。
たしかにマントルは少しずつ動いています。まるでヤカンの中のお湯のように、温められた部分は下から上へと移動し、冷めた部分は上から下へと移動しています。まるでマントル全体が大きくかき回されているようです。これをマントル対流と呼びますが、その速度はものすごく遅く、1年間に10cm程度(あるいはそれ以下)と考えられています。これはおおよそ、爪の伸びる速度と同程度です。あなたの爪はドロドロに溶けていますか? 溶けていませんね(笑)。マントルの岩石も硬い状態のまま、少しずつ地球の中で動いています。

◎マグマの作り方

では、どうやったらマントルの岩石が溶けてマグマができるでしょうか? これは「どうやったら氷が水になるのか?」と同じで、以下のうち、どれか1つ以上を満たすと溶け始めます。

  1. マントルの岩石がより高い温度になる。
  2. マントルの岩石が温度を保ったまま、地表付近まで上がってくる(圧力が下がる)
  3. マントルの岩石に、別の物質をまぜて、溶けやすくする

図3. どうすれば硬い岩石が、ドロドロのマグマになるのだろうか?

1は分かりやすいですね。氷も温度を高くすると溶けます。
2についてはこんな話は聞いたことはありませんか?
「高い山の上だとご飯を炊くことができない」
標高があがると気圧が下がります。すると100度よりもずっと低い温度でお湯が湧いてしまいます。低い温度でお米を炊いても、米粒はかたいままで、ふっくらおいしいご飯に仕上がりません。このように、圧力が下がると水(液体)は水蒸気(気体)に変わりやすくなります。岩石が溶ける場合も同じで、圧力が下がれば溶けやすくなります。
3についてもこんな話を聞いたことがあるでしょう。
「氷に塩をかけたら溶けやすくなる」
マントルにも「なにか」を混ぜれば、溶けてマグマが生まれます。ちなみに岩石は氷とは違い、岩石のカタマリがある温度で一斉に溶けることはありません。岩石はさまざまな物質からできていて、溶けやすいものから部分的に溶けていきます。これを「部分溶融」と呼び、液体部分を「メルト」と呼びます(マグマはメルトと岩石が混じったものです。マグマの語源もギリシャ語の「ミックス」です)。
日本列島で火山が多いのは、日本列島の下でマグマができやすいからです。その理由は上の1~3の、はたしてどれでしょうか?
正解は3番。マントルに「あるもの」が加わって溶けやすくなっているのだと考えられています。
本連載の第8話でお話したように、日本列島の下には海洋プレートが沈み込んでいます(図4)。海の底で生まれた海洋プレート自身は、海水を多く含んでいます。海洋プレートは日本列島の下に沈み込みますが、地下の高い圧力や温度のために、海洋プレートにしみ込んでいた海水ははき出されます。この水こそが、マントルを溶けやすくする「なにか」だったのです。
水が加わったマントルは、日本列島の地下100~200kmで溶けやすくなり、マグマを生み出します。マグマは周りの(溶けていない)マントルよりも軽いため、徐々に上昇し、地表にまで辿り着き、火山を作るのだ、と考えられています。
火山は「煙の出ている高さ1~3kmくらいの山」と考えがちですが、その根っこは地下100kmまで続いているらしい。なんとも壮大な話です。

図4. レートテクトニクスの概念図。海洋プレート(リソスフェア)は海嶺(海底火山)で生まれて、海溝から陸地の下に沈み込む。日本列島のように海洋プレートが沈み込むエリアは「沈み込み帯」と呼ばれている。海洋プレートが深さ100~200kmまで沈み込んだところでマグマが生成される。ベレ出版『地底の科学』より。

◎国内の活火山は110か所

海洋プレートが沈み込む日本列島にはこうしてたくさんの火山が作られます。図5に日本の活火山の分布地図を示しました。気象庁によれば、活火山の数は2014年現在で110か所だそうです。
パッと見て気づくのは、近畿・中国・四国地方には活火山がほとんど見当たりません。日本列島の下には「太平洋プレート」と「フィリピン海プレート」という、2つの海洋プレートが複雑に沈み込んでいて、このような不均一な活火山の分布を作り出しています。この辺りはまたいつか詳しくお話することにしましょう。

図5.日本の活火山。気象庁ホームページより(上図をクリックすると拡大します)。
http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/katsukaza
n_toha/katsukazan_toha.html

ちなみに「休火山」「死火山」という言葉を覚えている方もおられるでしょう。一昔前は、いま噴火している火山を「活火山」、現在は噴火していない火山を「休火山」、古文書などを遡っても噴火の記録のない火山を「死火山」と呼んでいました。
たとえば冒頭の富士山は、かつては休火山に分類されていました。しかし休火山がある日突然、活発に噴火を始めても不思議ではありません。火山の寿命は長いのです(数十万年以上!)。そこで休火山でも死火山でも、今後噴火する可能性がある火山はすべて、活火山と呼ぶことになりました。いまの教科書には休火山や死火山は載っていませんから、ご注意を。
さて今回はここまで。次回は火山噴火の仕組みに迫りましょう。「マグマ溜まり」って聞いたことはありますか? それは火山のどこにあるのかな?

つづく

【バックナンバー】
第1話 世界一深い穴でもまだ浅いのだ
第2話 「マグニチュード9.0」ってなに?
第3話 マグニチュードがだんだん増える?
第4話 地震計は命を救う
第5話 地震科学は失敗ばかり?
第6話 地中の埋蔵金の探し方(1)
第7話 想定外と想像内の狭間で(1)
第8話 想定外と想像内の狭間で(2)
第9話 想定外と想像内の狭間で(3)
第10話 想定外と想像内の狭間で(4)
第11話 地中の埋蔵金の探し方(2)
第12話 地中の埋蔵金の探し方(3)
第13話 火山噴火予知は可能か?(1)